フランスでの有給休暇

バカンスをとても大事にするフランス。メリハリの国フランスではしっかり働くためにしっかり休みます。ワークライフバランスを重要視するフランス流の働き方は、フランス人の気質によるものだけではなく、法に支えられています。有給休暇消化率では世界的優等生なのも納得の、フランスの有給休暇制度について詳しく見てみましょう。

労務

6/19/20241 分読む

サマーバカンスシーズンも間近に迫ってきましたね。5月にもなれば「今年の夏はどうするの?」という会話も飛び交い始めるのがフランス。よく知られるように、フランス人にとってバカンスはとても大切。特に夏の長期休暇は、多くのフランス人にとって一年を通しての最重要事項なのではないでしょうか。ストが多いことも相まって、ほかの国からは、フランス人は働かない、という不名誉な偏見を持たれがちですが、私が長年フランス人と一緒に働いてきた印象ではみんな一生懸命働いています。そのモチベーションとなるのがまさにバカンス。フランスはメリハリの国。しっかり働くためにしっかり休む、そのほうが生産性のためにも良い、という考え方です。また、ワークライフバランスを重要視するフランス流の働き方は、フランス人の気質によるものだけではなく、法に支えられているものです。有給休暇消化率では世界的な優等生なのも納得なフランスでの有給休暇について詳しく見てみましょう。

フランスでの有給休暇は何日あるの?

フランスでの年間の有給休暇は、30日(jour ouvrables=営業可能日)。営業可能日というのは読んでそのまま、営業や勤務が法的に可能な日、つまり日祝を除く週6日を指します。その営業可能日の30日ということは、年間5週間の有給休暇が取れるということですね。

どうやって取得するの?

有給休暇は毎月の労働で2,5日(jour ouvrables=営業可能日)ずつ取得され、丸一年で30日の計算になります。

有給休暇の規準期間

この毎年30日間の有給休暇の権利の取得には基準となる取得期間があるのですが、カレンダーのように1月1日始まりではないんです。有給休暇のカウントは、毎年6月1日にはじまって5月31日に終わります。例えば、2023年6月1日から2024年5月31日までが一つの期間になります。

基準期間途中での入退社の場合はどうカウントされる?

例えば9月1日入社の人の場合、その年の有給休暇数は、9月1日から5月31日までをカウントします。この例だと、入社年の基準期間では、22,5日の有給休暇を得ることになります(勤務月数9カ月×2,5営業可能日/月=22,5日分)。

有給休暇の取り方の規則

さて、こうして取得した有給休暇の権利、使い方にも規則があります。

5週間分の有給休暇を一度に連続して取ることはできない

年間5週間の有給休暇は、メインの夏季休暇とそれ以外の2種類に大きく分けられます。5週間の休みをひとまとめに取ることはできません。

メインの休暇は最低でも2週間

フランス人の一年を通してのメインイベントともいえる休暇は、5月1日から10月31日までの間に取らなければなりません。

このメインとなる休暇は、最低でも12日(営業可能日)を連続でとる必要があります。つまり2週間ですね。2週間以下の夏休みはフランスでは違法ですよ。日本人からすると驚くかもしれません。

また、5週間の有給休暇を一気に取ることはできない、ということは夏季休暇は、最長で24日(営業可能日)、つまり4週間です。

夏季の休暇を、複数回に分けてとることもできます。もちろんここでも、少なくとも一度は最低でも12日(営業可能日)を連続でとることが求められます。例えば、7月に2週間の休みをとり、9月に1週間の休みをとる、など。

そのほかの休暇

メインの夏季休暇以外にはクリスマスに休暇を取る人が多い印象です。日本のお盆のような、いやむしろそれ以上の家族の結束感あるいは義務感で、クリスマスはみんな家族のもとへ移動します。この時期にスキーに行く家族も多いです。なのでクリスマスは1~2週間の休みを取る人も少なくありません。そのほかは子どもの学校の休みに合わせて2月にバカンスをとったり4月にバカンスをとったり、それぞれです。

取得した有給休暇をまとめて申請できる例外的シチュエーション

年間5週間の有給休暇はひとまとめに取ることはできない、と上に書きました。ただし取得した有給休暇を全部一気にまとめて申請できる例外のシチュエーションもあります。

  • 外国人など、帰省に地理的な問題が伴う場合

  • 家族にハンディキャップがありそのお世話をするなどの場合

  • 勤続期間が短いため、取得した有給休暇日数の合計が12日に満たない場合

などです。

有給休暇はいつまでに消化すべき?

毎年の5週間の休暇は基準期間終了日の翌年5月31日までに取り切らなければなりません。つまり、先ほどの例の2023年6月1日から2024年5月31日までの期間に取得した有給休暇は、2025年の5月31日までに全部消化する必要があります。もしこの期限までに有給休暇が使い切れなかった場合、原則では使用されなかった日数は消滅し、次年度へ繰り越すことはできません。

雇用者の義務

従業員が有給休暇の権利を行使できるように、会社側にはあらゆる措置を講じる義務があります。例えば、休暇を取る時期を通知したり、社員がどの順番で休暇にでるかを調整するなどです。もし社員が有給休暇を取れなかった場合、会社側が雇用者としての義務を適切に遂行したかが問われます。

令和4年就労条件総合調査によると、日本での有給休暇の消化率は平均で58.3%と過去最高ですが、それでも世界的に見ると依然として低い状態です。特に会社の規模が小さくなるほど消化率は低くなり、休暇が取りにくくなる傾向があります。誰かが休むことで業務が停滞する場合は、業務プロセスの見直しや、IT化による業務の効率化、属人化の解消などを通じて、誰が休んでも業務が滞らない仕組み作りが必要だと思います。

従業員も権利を行使しなければならない

逆に、従業員が「休みは要らない」と言って有給休暇を取らずに働いたり、有給休暇をお金に換算して支払ってもらうことは違法です。また、有給休暇中に別の組織で働くことも違法です。これは、他の失業者の仕事を奪うことになるという理由からです。有給休暇中に労働して報酬を得てもよい唯一の例外は、ワイン農家でのブドウ収穫作業です。さすがワインの国フランス、興味深い例外ですね。

有給休暇を寄付できる場合も

有給休暇の権利は自ら行使することが大前提ですが、有給休暇の一部を社内の別の従業員に寄付することができるケースもあります。例えば、重病を患っている子どもやハンディキャップのある子どもの世話をする同僚や、家族の介護が必要な同僚への寄付がその例です。ある社員の子どもが大きな病気にかかった際に、会社の皆が少しずつ自分の休暇を寄付し、その社員が収入にダメージを受けることなく長期間子どもの看病ができた、という話を読んだこともあります。

勤怠管理が大変?ソフトを利用しよう!

従業員数が少ないうちはまだエクセルなどの手動管理で対応できても、従業員数が増えると勤怠管理もなかなか大変なもの。勤怠管理業務にかかる時間と労力、さらには手作業によるエラーも考慮すると、勤怠管理ソフトの導入がおすすめです。特に飲食業やホテル業など勤務時間がシフト制の業種では、複雑なシフトパターンも簡単に管理できるようになり、労働時間データの正確性も向上します。ソフト上でシフトが可視化されれば、従業員にとっても自身の勤務状況が把握しやすくていいですね。

フランスでも多くの勤怠管理ソフトがあります。有名なものとしては以下のようなものがあります。

などです。

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おわりに

フランスでの有給休暇の取り方について理解することは、経営者にとって重要です。従業員の権利を尊重しつつ、業務の円滑な運営を図るためには、適切な休暇管理が不可欠。より一層充実した労務管理のためにこの記事が少しでも参考になれば幸いです。

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参考サイト

https://www.economie.gouv.fr/entreprises/conges-payes#

https://travail-emploi.gouv.fr/droit-du-travail/les-conges-payes-et-les-conges-pour-projets-pro-et-perso/article/les-conges-payes#

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